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よくある質問

高齢期を迎えつつあります。今後のすまいをどのように考えたらいいでしょう?

いつまで自宅に

高齢期のすまいを考えるのに最も重要なポイントは、いつまで自宅で暮らせるかです。

自宅での生活が困難になったときの選択肢としては、有料老人ホーム(住宅型・介護型)、サービス付き高齢者向け住宅、グループホーム、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設などがあります。グループホームは認知症の利用者が対象です。

ここでは、それぞれについてのくわしい説明は省きますが、まず、このうち要介護度によらず終の棲家にできるのは、終身利用の契約にもとづく有料老人ホームと特別養護老人ホームです。

介護老人保健施設、介護療養型医療施設は、治療やリハビリなどに要する一定期間の入居が原則のため、終の棲家とすることはできません。サービス付き高齢者向け住宅は賃貸契約であって、要介護度が上がると退去を求められるところがあります。

特別養護老人ホームは、どの施設も入居待ちの待機者が多く、現実的には入居することができません。したがって、原状で終の棲家とすることができるのは、介護付き有料老人ホーム、終身契約付きの住宅型有料老人ホーム、その他の施設では契約時に十分な確認が必要ということになります。

また、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅については、提供されるサービスは、前者が見守り、食事・掃除・洗濯の世話といった生活援助や緊急時の対応、後者が安否確認 生活相談 生活支援(掃除、買物代行など)で、介護の専門職の常駐も義務付けられていません。サービス付きといっても、医療や専門的な介護サービスでないことに留意する必要があります。

自宅の豊かさ

さて、冒頭にいつまで自宅で暮らせるかポイントと述べたのは、御幣を恐れずにいえば、これらの施設については「ホーム」「住宅」という名称を冠しているにもかかわらず、本来の「住宅」とはかけ離れた、まったく別物であると考えた方がいいからです。

在宅に比べると活動の量と質が大きく異なります。施設では、食事の支度―買い物や炊事などは通常行わなくなりますし、庭の手入れ、雨戸の開け閉めなど、家でしていたことでできなくなくなることが増えます。また、家に比べ、活動の動線が短くなることから運動量が減ります。また、本サイトのブログ等でたびたび言及しているとおり、家は自己のアイデンティティの一部であり、家には子育ての思い出、家族の悲喜こもごもな出来事、さまざまな体験、記憶が埋め込まれています。
さらに、アイデンティティを形成する要素のひとつに、自分が何に属するかというのがありますが、家とは自己が属する家族、地域社会の象徴でもあります。
家での活動はそれらとの対話、確認でもあって、そのことによって自己のアイデンティティが形成されるのです。

家での活動は、その質の豊かさについても大きな違いがあって、これらは施設に入居したとたんに実感させられることになります。
場合によっては活動朗が低下し、一日の大半をベッドに入って過ごすようになって、廃用の影がひたひたと忍び寄ることになります。認知機能の低下の恐れもでてきます。
施設入居後の生活の質については、施設の運営者、管理者、スタッフの専門性と力量、運営方針に大きく依存します。

したがって、自宅で過ごせる時間をいかに長くできるかが重要なのです。

そのためには、単に自宅をバリアフリーにすればいいというものでもありません。
私たちの生活機能は、健康状態や環境との相互関係で決まります。環境とは、住環境をはじめとして、外部環境、介護者等の人的資源、活用できるサービス、社会制度等を広く含みます。
環境の要素としての介護者がいれば、身体機能や活動が低下しても、また健康状態が多少悪化しても自宅で暮らすことができます。介護者がいない場合、ホームヘルプや配食サービス等のサービス資源を活用できれば、自宅で暮らせる時間を長くすることもできます。

高齢期のすまいの工夫

では、自宅で暮らせなくなる原因には、どんなものがあるでしょう?
ひとつは、疾病等による生活機能の著しい低下です。これには骨折、糖尿病の悪化、脳血管障害による後遺症等が考えられます。
また、認知症の発症は、自宅での生活を著しく困難にさせます。

これらを防ぐためには、日ごろの健康管理が重要です。特に女性の場合、骨粗しょう症は骨折につながりやすく、大腿骨や頸椎の圧迫骨折などは生活機能に重大な支障を生じます。普段からのカルシウム摂取等が大切です。血圧や血糖の管理などはいうまでもありません。自治体などで、介護予防のための運動や健康管理などのプログラムが用意されているとこともあり、これらはぜひ利用したいものです。

また、高齢になると、脱水の防止が重要になります。重症になると筋肉が動かなくなり、以後車椅子の利用を余儀なくされることもありますし、場合によっては生命に危険が及ぶ場合もあります。

認知症については、MCI(軽度認知障害)の段階での適切な予防プログラムが効果のあることが実証されています。これも自治体が主体となって実施している場合があります。

これらの健康維持について、日ごろからの意識の持ち方が極めて重要です。脱水防止のための水分摂取などは、意識的に行わないとなかなかできません。介護予防のプログラムなども、面倒がっているとなかなか利用できません。
自宅で過ごす豊かな時間をできるだけ長くするために、健康管理や疾病、介護予防を積極的に行っていくことが何よりも重要です。

さて、こうした観点で、自宅の環境整備をどのようにすればよいかについて考えてみます。

ポイントは3つ。
ひとつは、家庭内事故等のリスクの除去。
二つ目は、移動の動線を短く簡潔に。
そして三つめは、インテリアの風景をシンプルに、です。

何よりもまず安全の確保が大切です。「医療機関ネットワーク事業からみた家庭内事故-高齢者編- 」(独立行政法人国民生活センター)によると、65歳以上の事故のうち、住宅内の事故は全体の77.1%を占め、原因は転落が30.4%、次いで転倒が22.1%となっています。事例を見ると、「靴下やじゅうたん・バスマット・毛布などに足をとられて転倒」など、住宅をバリアフリーにしても防げない、隠れたリスクによる事故が少なからずあります。これらのリスクを洗い出し、除去することが必要です。

移動の動線はできるだけ短く、しかもわかりやすくすることが大切です。身体機能が衰えてくると、移動距離が長いと転倒などのリスクが増え、心理的負担も大きくなります。また、認知機能が衰えてきたとき、移動経路が長く複雑だと、トイレにたどり着けなくなる事態などが生じかねません。また、当然移動経路にはモノが散らかっていないことがとても重要です。

私たちの記憶や行動は、環境を利用することにより、環境との相互関係によって形成されると言われています。ものを減らし、収納場所をわかりやすくしておけば、脳の記憶だけに頼らずものを探しやすくなります。
シンプルで分かりやすいインテリアの風景は、衰える認知や行動を助ける可能性があります。

また、お気に入りの家具などで、思い出の品々などの収納場所をシンボライズすると、我が家らしさ=自己のアイデンティティがよりはっきりと感じられるようになります。
施設に入居することになったときに、馴染んだ家具や道具や物品をもちこむとよいと言われますが、ごちゃごちゃとものがあふれている家では、そのなかから我が家らしさ醸し出するものを抽出することは容易ではありません。

認知機能や身体機能がおとろえたときのために、できるだけ早い段階から準備をし、こうしたシンプルなインテリアを、自分のアイデンティティを反映するものとして、十分に慣れ親しんでおくことが重要です。

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