現場調査ー永年の雨漏り問題が解決
Aさん一家は、新築直後から複数個所からの雨漏りに悩まされていました。
瑕疵担保責任を負う施工業者は、当初は対応したが結局雨漏りを直すことはできず、たびたび交渉を重ねたあげく、対応してくれなくなってしまいました。
雨漏りが見つかってから5年がたち、その間リビングの天井はずっとはずしたままです。
施主のストレスは大きく、通院が必要になるほど精神的に大きなダメージを受けていました。
こうしたなか、雨漏り検査を依頼された検査機関から相談を受けました。
雨漏り事象は確認したが、原因の確定に協力してほしいということでした。
あわせて、交渉の代理人としてT弁護士が選任されました。こうした場合依頼者のメンタルに十分配慮したうえで適切な対応をしてくれる弁護士は多くありません。T弁護士は、心理カウンセリングにも造詣が深く、自ら勉強会を主催しています。T弁護士の方針は、依頼者の心理的ダメージに十分配慮したうえで、前向きに立ち向かう心を引き出そうとするものでした。原因の究明を本人の意思としておこなうことにポイントが置かれました。
ちなみに、雨漏りの原因となる侵入経路を特定するのは一般にきわめて難しく、建築施工に関する経験と技術力を必要としますが、この検査機関は、独自に開発した調査器具を使い、ピンポイントで雨漏り個所を特定できる高い能力を有しています。
私たちは、T弁護士からの指示で、壁の一部を壊して雨漏り原因を突き止めることにしました。
寒風が吹きつけるなか、調査が開始されました。
あらかじめ決めておいた範囲のモルタルを下から順にていねいにはつっていきます。
モルタルの下の防水紙が現れてきます。
すると、防水紙がめくれて合板が露出している部分が見つかりました。施工時に発生したとみられるミスです。この部分は雨漏りの経路と推定される部分と一致します。
原因がはっきりわかりました。明らかに新築時の瑕疵と考えられます。
計測してみると10ミリに満たないところもあります。設計図書には25ミリと記載されているにも関わらず。そういえば、当該住宅の外壁には細かいクラックが異常に多く発生しています。
同時期に建てられた同じ施工者による隣家には、クラックがまったくみられません。明らかに地震などの施工後の外的要因によるものでないことがわかります。
これらのクラックに沿って下の防水紙が腐食しており、そこから雨水が侵入していることが確認されました。
雨漏りの原因は、モルタルの塗り圧不足によるものと明らかになりました。
しかも、それは外壁全体に及んでいます。
これは、契約内容と明らかに異なり、また建築基準法や仕様書等にも違反する瑕疵と考えられました。
この事実をもとに交渉がすすめられ、最終的に和解が成立しました。
異なった分野の専門家がカウンセリングというキーワードのもと協力し、依頼者の心理的ニーズに配慮しながら対応した成果でした。